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「機動戦士ガンダム 水星の魔女」1クール目における「祈り・願い」と「呪い」について

 

年明けから既に1ヶ月経って今更も良いところですが、あけましておめでとうございます。昨年は機体の不調に悩まされたこともあり、あまりブログを書く等の積極的な発信行動を行うことが難しい状況でした。(昨年中の記事はなんとわずか3つ)ですので今年は機体のメンテナンス(通院)を引き続き続けながら、ジムに行ったりと新しい習慣も取り入れてできるだけ積極的に活動していけるような健康づくりに取り組みつつ、昨年よりも積極的な発信行動を行っていこうと思っています。

さて、私の昨年最後の記事のテーマにもなっている機動戦士ガンダム 水星の魔女」ですが、記事にも綴った放送前に抱いた期待を大きく超えて毎話放送される度にTwitterのトレンドを席巻し、新年明け最初の週末にの1クール目の最終回を迎えました。Twitterの反応も様々ありましたが、物語が大きく動く急展開を迎えて2クール目の予想が全くつかず驚嘆しているのは共通で、放送後も数日間「水星の魔女12話」というワードでトレンド入りし続ける程の大きな反響がありました。私も12話を見た後はしばらく驚いていましたが、しばらく経って冷静になってからじっくり考えてみると、12話の展開は私がプロローグ公開時から水星の魔女のテーマであると考えていた「祈り・願い」と「呪い」如実に表しており、それこそが水星の魔女のテーマの1つであると確信するに値するものでした。本記事では水星の魔女で「祈り・願い」と「呪い」というテーマはどこに現れているのかという事を描こうと思います。

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上:水星の魔女12話放送直前のTwitterトレンド

下:水星の魔女12話放送後約1時間超経過後のTwitterトレンド

 

 

※以下「機動戦士ガンダム 水星の魔女 」のネタバレが含まれるので未視聴の方はご注意ください

 

 

 

 

 

 

 

 

・プロローグで描かれる「祈り・願い」と「呪い」

昨年の記事に書いたことと重なってしまう部分も多々あると思いますが、「祈り・願い」と「呪い」という観点から改めてプロローグで起こった事件であり、全ての始まりとなるヴァナディース事変についてまとめてみようと思います。

水星の魔女における「ガンダム」とはGUNDフォーマットという身体拡張技術が使われているモビルスーツ(以下MSと略称する)の総称でありGUND(ガンド)フォーマットとは本来は義肢等の医療技術であるGUND(ガンド)という技術をMSに応用したものとなっています。GUND技術の第一人者でありGUNDの研究機関であるヴァナディース機関の責任者でもあるカルド・ナボ博士はGUNDによって人類が宇宙に進出する上で生じる身体の機能障害を補い、多くの人々の命を救いやがては宇宙に適応・進出していく未来をプロローグで語っており、更に8話でミオリネが持ち込んだカルド博士の過去の映像では「GUND医療は高額なワクチンやインプラントアプリでは解消できない障害を解消し、身体の脆弱性を補う希望の技術であり、生命圏の拡大だけでなく、地球と宇宙、双方の格差と分断を融和する可能性をも秘めている」と水星の魔女の世界の大きな問題である地球居住者アーシアンと宇宙居住者スペーシアンの格差と分断、差別の問題を解消するという未来への「祈り・願い」がGUND技術には込められていたことが明かされます。

しかし、ヴァナディース機関のスポンサーとなったオックス・アース社の思惑によりGUNDはGUNDフォーマットというMSを動かす技術に転用され、「ガンダム」という兵器が生まれてしまいます。「ガンダム」は他者の命を奪うという本来の兵器としての機能だけでなく、パイロットの身体と精神に大きな負荷をかけて蝕むという「呪い」とも呼ぶべき恐ろしい兵器となってしまいました。しかし、そんな中でもカルド博士はGUNDが兵器として使われることは本意ではないという思いを持ちながらも、その落とし子であるガンダム・ルブリスに先述したような未来への「祈り・願い」を託していました。しかしそれも後の歴史ではヴァナディース事変と呼ばれることになるデリング・レンブランによるガンダムを始めとするGUND技術の抹消および関係者の抹殺を目的とするヴァナディース機関への襲撃により、カルド博士を先生と仰ぎ彼女が語るGUNDの理念に共感していたエルノラ・サマヤ(後のプロスペラ・マーキュリーと推定される)と娘のエリクト・サマヤ、そして彼女たちを乗せていたガンダム・ルブリスを残してGUND技術に関するデータや関係者はほぼ全て抹殺されてしまいました。さらに同時に行われたデリングの「全てのガンダムを否定する」という世界に向けての宣言によりGUNDは忌むべき「呪い」の技術としての烙印を押され、本来の「祈り・願い」を込めた理念ごと表舞台から姿を消してしまうことになりました。

ここからは本編で示唆されてはいるものの確たる情報が無いため推定となりますが、この事件で夫や恩師であるカルド博士、その他の仲間たちを失ったエルノラ・サマヤも復讐という「呪い」に取り憑かれてプロスペラ・マーキュリーと名乗るようになって娘であるエルノラ・サマヤを利用して新たなるガンダムであるエアリアルを生み出し、同じく何らかの手段で生み出した本編の主人公であるスレッタ・マーキュリーと共に娘達と称して復讐の道具に仕立て上げるまでに変わり果ててしまいました。

(エリクトとスレッタに関してですが、ヴァナディース事変は21年前と本編で明言されており、当時4歳であったエリクトは本編時点では25歳になっているはずであり、本編で16歳の学生であるスレッタと年齢が合わないことから両者は別人という前提で書いています。)

こうして人命を救い、宇宙進出とアーシアンスペーシアンの格差解消という「祈り・願い」が込められたGUNDという技術、およびその落とし子であるガンダムは世界からは「呪い」をもたらすものに転化し、その関係者も「呪い」に強く縛られることになったという「祈り・願い」「呪い」に転化するという残酷な構造が見て取れます。

 

・GUND技術に込められた「祈りと願い」と「呪い」

GUND技術に込められた「祈りと願い」そして「呪い」の関係は最初の項の最後の段落にまとめてありますが、ここではそれを前提とした本編での扱いを見てみようと思います。

本編時系列中ではGUND技術が使われたMSであるガンダムは、監査組織カテドラルによって厳しく取り締まられており、2話の描写から決闘においてもMSの稼働データからガンダムと判断されたMSとそのパイロットは即座に捕縛され、カテドラルの諮問会にかけられてそこでガンダムと判断されればそのMSは解体、パイロットも退学等の厳しい処分を受ける事となります。実際、ガンダムと呼ばれるGUNDフォーマットを利用したMSは、パーメットスコアと呼ばれる稼働レベルに応じてパイロットにデータストームと呼ばれる脳や身体への著しい負荷がかかり、最悪死を招くものであることから「呪い」という烙印を押されて世界から禁じられるのも無理がないものだと考えられます。しかしそうして世界から禁じられてなお秘密裏に研究・運用が続ける勢力もありました。

ベネリットグループの御三家企業の一社であるペイル社は何らかの方法で地球から市民の無い人間を連れてきてGUND技術を埋め込み顔をエラン・ケレスと呼ばれる人間のものに変えたガンダムに乗るための「強化人士」という存在を生み出し、ファラクトと呼ばれるガンダムに当たるMSに乗せて身体に限界が来れば処分するという非人道的な実験を秘密裏に行っています。これも、元々人を救う「祈りと願い」が込められたGUND技術が人の命を使い捨てるような「呪い」に転化してしまっているこの世界の縮図の一つであると考えられます。

しかし、エアリアルと呼ばれるガンダムがその構造を大きく変化させる要因となります。エアリアルガンダムであるにも関わらず、ガンダム「呪い」とされ禁じられた原因であるデータストームが発生せず、パイロットであるスレッタには脳や身体への負荷が一切かかっていません。これはガンダムとしては画期的なものであり7話でペイル社に暴露されるまで世間にはエアリアルガンダムであるという事実が一時嫌疑はかけられたものの漏れなかった大きな要因です。そして、ミオリネがペイル社の暴露からスレッタを救う為にエアリアルが身体に負荷がかからないガンダムであるという事を理由にしてGUND技術の安全性を謳う株式会社ガンダムを設立したことによって作中のGUND技術の扱いも変わっていくことになります。ミオリネが株式会社ガンダムが取り扱う事業を決める際、当初は兵器として売り出すことを彼女は提案しますが、戦災孤児等戦争の影響下で育った社員である地球寮の面々の反発を大きく受け、彼女はガンダムに込められた本当の意味を探ります。そこで元ヴァナディース機関の研究員であり現在はペイル社の技術者であるベルメリアからガンダム、そしてその根本にあるGUND技術の本当の意味がGUND理論の第一人者であるカルド・ナボ博士によって語られた映像を託されます。(そこで語られた内容についてはお手数ですが最初の項を参照してください。)その映像からミオリネは「GUND技術による医療」という事業を提案します。人を救うという事業目的に、地球寮のメンバーの反応も好ましく、株式会社ガンダムはGUND医療の推進という事業目的を掲げるようになり、事業を進めていく事になりました。

この一連の出来事から、ヴァナディース事変によって「呪い」の烙印を押されてしまったGUND技術をその事実をよく知らないまま育った学生達という新しい世代が医療技術という目的に利用することにより、「呪い」の技術を本来の人を救うという「祈りと願い」の技術に変えていくという明るい側面が見えてきます。

 

・「逃げたら一つ、進めば二つ」 という言葉が表す「願い・祈り」、そして希望

水星の魔女1話でスレッタが使って以降、本編の要所で引用される言葉となっている「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉についてですが、この言葉はスレッタとミオリネを始めとした多くの人物の行動を象徴しています。この言葉が持つ「祈り・願い」と「呪い」の両側面について考えていきます。

まずはこの言葉が時系列上最初に出てきたのは本編の前日譚で主題歌「祝福」の原作となっている小説「ゆりかごの星」で、スレッタが5歳の頃注射を嫌がり逃げようとした時に、母であるプロスペラが 

「注射から逃げたら、痛くないが手に入る」

「注射から逃げなかったら、病気にならないだけじゃなくて他にも手に入るものがあって、例えばお母さんが喜ぶ」

「水星の人たちもスレッタは偉いと認めてくれる」

「スレッタのレベルが上がって注射が痛くなくなる」

「だから、進めば二つ以上手に入る」

このようなやり取りで、スレッタを勇気づけた事に由来します。水星の人たちも認めてくれるという言葉からもプロスペラとスレッタが水星に逃げてきた頃、好意的な人々だけではなく、存在を疎む老人達も少なくなかったという過酷な環境に二人は置かれていたという事実が背景にあります。母プロスペラが多忙だった事もあって、スレッタは母娘の存在を疎む老人にいじめられていて、それを母を心配させまいとエアリアルコクピットで堪えるときに、スレッタは母から教わった「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉を背中を押す勇気の呪文のように唱えて生きてきました。そしてその呪文はスレッタがたった一人で学園に行く話が来て、エアリアルコクピットの中でどうしようか迷っていた時にも、彼女が学園行きの話を受け入れる事を決めたきっかけにもなりました。「進めば二つどころかいっぱい手に入るよ。勉強も、友達も、先輩も、デートなんかしてさ」と。こうしてスレッタは「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉に勇気の「祈りと願い」を込めました。

そして学園に転入してきた日、学園から逃げ出そうとして宇宙を漂流しようとしていたミオリネ・レンブランと出会った事から本編の物語が始まります。学園に来て間もなく、スレッタはミオリネが学園内で生徒達がMSに乗って行う決闘において勝者であるホルダーが彼女の婚約者になれるという取り決めがあり、ホルダーの「トロフィー」として扱われている事を知ります。当時のホルダーであったグエル・ジェタークは婚約者という立場を嫌がるミオリネに横暴な振る舞いをしますが、その様子を見かねたスレッタはミオリネを助けるためにグエルに決闘を申し込みます。決闘当日、これは自分の戦いと言って無理矢理エアリアルに乗り込んで劣勢に陥るミオリネに代わってコクピットに乗りこんだスレッタは、ミオリネに告げます。

「お母さんが言ってました。逃げたら一つ、進めば二つ、手に入るって。」

「逃げたら負けないが手に入ります。でも進めば…勝てなくても手に入ります。経験値も、プライドも…信頼だって!」

その言葉と共にグエルを打ち破り、スレッタは言葉に込めた「祈りと願い」の通り見事にホルダーの座を勝ち取りミオリネの婚約者という立場を思いがけなく手に入れます。そして「逃げたら一つ、進めば二つ」とスレッタの言葉を直接耳にしたミオリネにも大きな変化を与えるきっかけとなりました。

2話開始直後にスレッタはエアリアルガンダムであるという嫌疑で拘束され、自身の退学と家族同然のエアリアル解体の危機に陥ります。そんな中ミオリネはあらかじめ手配してた運び屋が手配していた地球行きを蹴って、スレッタを救うべくエアリアル解体に関するカテドラルの諮問会に単身乗り込み、総裁である父デリングに啖呵を切ります。その途中、デリングの有無を言わせない言動に怯みそうになりますが、その時に「進めば二つ!」と小声で唱えて自らを奮い立たせ、再び反論したことで、諮問会そのものの空気を変えてエアリアル解体とスレッタ退学をかけてのグエルとの2度目の決闘に持ち込みます。グエルの決闘ではスレッタをサポートした上に決闘に勝利してスレッタと積極的にかかわる理由が無くなったその後の学園生活においてもスレッタの試験のサポート役を買って出たり、スレッタが地球寮に行ってからも度々押しかけるようになり、遂にはペイル社によって再びエアリアル解体に危機に陥ったスレッタを守るために反発していたデリングに頭を下げてまでGUND技術を取り扱う株式会社を設立するという当初地球に逃げようとしていた彼女からは考えられないような驚くべき行動(学内起業するという事は地球に逃げる逃げ道を自ら塞ぐ事)を取るようになります。ミオリネは言葉に棘があり、口で自分の感情を表現するのが得意ではない為これらのスレッタに対する献身の理由は中々本人の口からは語られませんでしたが、11話でのスレッタとのやり取りでずっと内に秘めていたスレッタへの想いが遂に語られます。

「うんざりなの!決闘もクソ親父も!だから逃げたかったのに!地球に行きたかったのに!」

「あんたが花婿なんかになっちゃったから!バカみたいに『進めば二つ』って言うから!」

「会社作る羽目になって、クソ親父にチクチク小言言われて、頭下げて!」

「あんたが一番分かってない!良かったって言ってんの!」

「私が逃げなくて良くなったのは、あんたのおかげなの!」

「だから......私から逃げないでよ……。」

学園を運営する企業複合体ベネリットグループ総裁の娘で、決闘の勝利者であるホルダーの婚約者という父親に押し付けられた自分の立場がずっと嫌で、地球に逃げる事しか考えていなかったミオリネは、スレッタのおかげでそんな現状から逃げ出すことを止めて進むことを選ぶ勇気を持つことが出来たことに強く感謝していて、スレッタ個人へ恋愛感情と言っても過言ではない愛情を寄せていたという大きな理由がありました。「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉にスレッタが込めた勇気の「祈りと願い」は、スレッタ自身だけでなくミオリネの人生を大きく動かすことになり、彼女にとっても現状に立ち向かうための勇気をくれる言葉になりました。

こうしてスレッタが母プロスペラから貰って、彼女が勇気の「願いと祈り」を込めた「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉はいつしかスレッタ自身だけでなくミオリネ、そして彼女達に巻き込まれる形で被差別階級であるアーシアンの学生たちである地球寮のメンバーにも大きな影響を与えていく事になりましたが、もう一人スレッタのこの姿勢に大きな影響を受けた存在がいます。そう、毎週登場の度にTwitterトレンドを席巻したグエル・ジェタークです。

グエルはベネリットグループの御三家企業と呼ばれているうちの1社であるジェターク社の御曹司で、1話時点ではその立場を笠に着た傲慢な男として出てきますが、2話で決闘に負けたことで父親に叩かれ謝る姿や、3話の決闘前のスレッタとの会話から伺うに、父親の言いなりにならざるを得ない根は素直であることが伺えます。そして3話の決闘において操縦を父親が用意したAIに代行されるという自分の夢であり拠り所であったパイロットの腕前への屈辱的な行いをきっかけに、「これは俺の戦いだ!」とAIから制御を奪還してスレッタに肉薄し、結果として敗北したもののその後の会話でスレッタに自分の誇りであるMSの操縦を「強かったです」と真っすぐ肯定された結果、彼女に惹かれるようになりました。それ以降、スレッタがエランとデートするという情報を聞きつけ彼女に冷たく当たり涙を流させたエランに対して父親の決闘禁止の言いつけを破ってまで決闘を申し込み、ジェターク寮から追い出されて父親から事実上の破門宣言をされるまでになりました。結果だけ見れば、1話をピークに転落人生を歩んでいるように見えますが、それでも今まで父親の言いなりに動いていただけだった1話以前よりは、スレッタから「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉を受け取り、自分自身の強さを認めてもらってからは自分の意思を優先して行動するようになり、父親からとうとう退学を宣告された折に学園から失踪して宇宙で身元を隠し作業員として働くようになった時には、本来の素直な性格が前面に出て職場の先輩たちに好かれ、自分自身の人生を歩み出すまでになりました。ここから考えると、普段から関わりが多いミオリネとは別の形ですが、彼もまた、スレッタの「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉通りの実直さによって、父親の言いつけという「呪い」から解き放たれ大きく人生を変えられた存在だと思います。

このように「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉は母プロスペラからスレッタが貰い受け、スレッタが込めた勇気の「祈りと願い」によって彼女の周囲に関わる人々の人生に大きな影響を与え、親達が彼女らを縛り付けていた立場という「呪い」から、彼女らを解放して自分自身の人生を歩むための勇気と希望になったことがお分かりになるかと思います。

しかし1クール最終回である12話において、「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉に込められているのは「祈りと願い」だけではなく「呪い」とも呼べる負の側面が明らかになってきました。次の項でそれについてお話していこうと思います。

・12話に見られる「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉が持つ「呪い」の側面

12話では「フォルドの夜明け」という反スペーシアン組織がデリング暗殺を目的に彼がいるプラント・クエタに襲撃をかけるという今まで戦乱の気配が無かった水星の魔女本編の時系列でもでとうとう武力闘争が勃発する事態となり、本編のメインキャラである学生達もそれに巻き込まれる形で大きく変化していく事になります。

まずグエルですが、先述した通り彼はジェターク家から追い出されながらも学園を抜け出し身分を隠しながら宇宙作業員として働き始め、周囲とも良好な関係を築いていました。しかし乗っていた作業艦が「フォルドの夜明け」に襲撃され乗っ取られてプラント・クエタに向かうことになります。他の作業員共々捕虜にされたグエルは襲撃に使われているのがジェターク社のMSであることを見破りつつも船内の一室に監禁され何もできない状態でした。しかし、今回の襲撃の首謀者の一人であり、同じ首謀者であるグラスレー社の後継者のシャディク・ゼネリに見捨てられたジェターク社CEOでグエルの父親のヴィム・ジェタークがプラント・クエタに取り残されており、シャディクを見返すために協力者である「フォルドの夜明け」に反目して彼らを迎撃する為に自らMSで出撃しました。そこで偶然にもグエルが囚われた作業艦を攻撃したところ、その衝撃で彼が囚われていた部屋のロックが開き、「フォルドの夜明け」構成員の会話からグエルはスレッタがプラント・クエタに居る可能性がある事を知ります。そして彼女がいるであろうプラント・クエタに向かう為に見張りの隙を突き部屋から脱出して「フォルドの夜明け」が持ち込んだMSに乗り込み宇宙に出ます。しかし運悪くグエルは父ヴィムの乗ったMSに出くわし、敵とみなされて猛攻を仕掛けられてしまいます。グエルは必死に敵ではないことを訴えかけますが、「フォルドの夜明け」が襲撃に当たってプラント・クエタ周辺に仕掛けた通信妨害の影響によりヴィムには届かず、追い詰められてしまいます。命の危機に瀕したグエルは「死ねない…死にたくない!」「俺はあいつに…スレッタ・マーキュリーに進めていない!」と奮起し、持ち前の操縦技術で紙一重の所で近接戦を制し安堵します。しかし接触してしまったことにより接触回線が開き、互いに誰が乗っていたかを知ることになってしまい、コクピットへの致命傷で意識が混濁したヴィムはおそらく状況を把握できずに「探したんだぞ……。」という一言を残し、狼狽えて必死に脱出を呼びかけるグエルの言葉も虚しく、MSは爆散してしまいます。そうして後に残されたのは意図せず父親を殺めてしまったグエルの慟哭の絶叫だけでした。

グエルは父親の言いなりという呪いからスレッタの「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉と彼女に強さを認められたことを支えにして自分の人生を歩んできましたが、今回そうして「進めば二つ」と唱えてスレッタの元に進もうとした結果、立場を押し付けられてはいたものの決して憎くは思っていなかった父親を意図しなかったとはいえ自分の手で殺めてしまったという生涯消える事の無い「呪い」を背負う事となってしまいました。

グエルの顛末は進むための「祈りと願い」が込められていた「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉が消えない「呪い」となってしまうことがあるという残酷な現実を示しましたが、次にお話するスレッタとプロスペラの動向とその後のスレッタの顛末は、この言葉がより深い「呪い」を帯びてしまっているという事実を示していると考えられるので、次からそれをお話します。

プラント・クエタへの襲撃によりミオリネと分断されてしまうスレッタは、ミオリネを助ける為にエアリアルのある格納庫に向かいますが、施設内を制圧しデリングを探している武装した「フォルドの夜明け」の構成員達に出くわしてしまい、慌てて身を隠すものの物音により見つかる危機に陥ってしまいます。見つかる直前、従者を従えた母プロスペラが構成員達を銃殺することでスレッタは救われましたが、目の前で人間の命が奪われたことに恐怖して怯えてしまいました。「そうしなければ、あなたが殺されていた」とプロスペラは宥めるものの、スレッタの動揺は消えません。これまで水星や学園という格差と差別はあるものの基本的に人が人に殺されることは無い環境で生きていた彼女には無理もない状況です。そこでプロスペラはあの言葉を持ち出します、「逃げたら一つ、進めば二つ」と。そして彼女はスレッタに語り始めます。

「扉の向こうに籠っていれば、お母さんはこの人たちを殺さずに済んだ。でも戦ったことでスレッタを死なせずに済んだ。」

「そしてもう一つ、スレッタがエアリアルと一緒に戦ってくれたら……。」

しかしスレッタは震えながら「無理だよ…だって……。」と人を殺すことに反論します。しかしプロスペラはなおも彼女に語りかけます。

「今起こってるのは決闘じゃない。怖いよね?傷つきたくないよね?でも、あなたとエアリアルなら、お母さんもスレッタもミオリネさんも、みんな救われる。今みんなを救えるのはあなた達だけよ。」

「スレッタ、あなたは進める子。でしょ?」

こう語りかけられた、手を差し伸べられたスレッタは震えが止まり、

「うん...。進める。進んできた。」

「逃げたら一つ、進めば二つ!」

と立ち上がれるようになり、エアリアルに乗り込んで戦い、ガンダムも含んだ「フォルドの夜明け」のMS部隊を撤退にまで追い込むことが出来ました。この時点ではスレッタは誰も撃墜していないので、先ほどと何も変化が無いように見えますが、問題はこの後の展開で表面化します。

ミオリネは自分をかばって負傷した父デリングを担架に乗せて運んでいましたが、「フォルドの夜明け」構成員の1人に見つかり、自身と父共々命の危機に陥ります。そんな時にスレッタがエアリアルで駆けつけたのですが、彼女はミオリネを助ける為に、銃を向けた構成員を、「やめなさい!」という一言と共に躊躇いなくエアリアルの掌で叩き潰すという暴挙に出ます。そして彼女はそのままコクピットから出てきて、いつもと変わらない調子で叩き潰した構成員の血で塗れた手をミオリネに差し伸べて「助けに来たよ、ミオリネさん。」といつもと変わらない笑顔を向けました。ミオリネはそんな彼女を当然理解することが出来ずに「なんで…笑ってるの......。」「人殺し......。」と拒絶の言葉を投げかけて水星の魔女1クール目は幕を閉じます。

このスレッタの顛末から伺えるのは、「逃げたら一つ、進めば二つ」と唱えれば、彼女がもともと強い忌避感を持っていた殺人という行為にも手を染める事が出来るようになり、尚且つそれを躊躇うことなく実行していつも通りの態度でいられるという恐ろしいスレッタの歪みとプロスぺラがそのようにスレッタを思い通りに操れるようにこの言葉に込めた「呪い」です。

最初の項でお話した通り、スレッタの母プロスペラはヴァナディース事変で夫と命の恩人や同僚たちを失ったことをきっかけに復讐という「呪い」に取り憑かれ、自分の娘達を復讐の道具に仕立て上げる程に変貌してしまいました。プロスペラの復讐が何を意味するのかは不明な点が多いので憶測も交じりますが、彼女はスレッタを復讐の道具としてデリングの娘であるミオリネの婚約者を賭けて学園で行われている決闘制度に目を付けてスレッタを本人にそうとは知らせず学園に送り込み、学園に行った後もこまめに連絡を取り、株式会社ガンダム設立の際、スレッタが「何故エアリアルガンダムであることを隠していたのか?」と聞いた時にも、「あなた達を守るため」と言いくるめてスレッタを全面的に信頼させたりとまるでスレッタの精神面の根本をずっと依存させるように誘導してきたように考えられます。実際、プラント・クエタでミオリネと気持ちがすれ違った際もトイレの中で電話をかけてきたスレッタに対して自分の元に来るよう助言して、直後にミオリネが来なければスレッタは間違いなくプロスペラの元に向かっていたであろう描写が見受けられます。そして先程述べたエアリアルのハンガー近くで殺人の恐怖に震えるスレッタに向けたやり取りを見てみると、最初の項でお話したスレッタが最初に「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉をプロスペラに教えられた時のやり取りと酷似しており、幼い頃にスレッタに勇気を授けるのと同じようにして彼女に守るための殺人への忌避感を無くさせるようにプロスペラが話しているように受け取ることが出来ます。(是非とも最初の項のスレッタ5歳の時のやり取りと先程お話したエアリアルのハンガー近くでスレッタを立ち上がらせたやり取りを比較して読んでみてください。)

注射を怖がる5歳のスレッタに「逃げたら一つ、進めば二つ」と教えた時のプロスペラに全く愛情が無かったとは私は思いたくはないですが、スレッタを躊躇なく殺人へと駆り立てたという顛末を見ると復讐という「呪い」に囚われた彼女はスレッタを勇気付け、スレッタが勇気の呪文として「祈りと願い」を込めていたこの言葉をプロスペラは自分の復讐の道具として思い通りに操る「呪い」を込めたものとして娘に授けてしまったのではないかと考えてしまいます。

・感想とまとめ

プロローグが公開されてから、女性と女性の関係性を中心とした人間ドラマ的な側面と「ガンダム」というMSをテーマにしたSF的な側面の両方のドラマを私は期待してきました。そして本編が始まると学園物としてのキャッチーな側面を打ち出して今までガンダムシリーズに触れたことの無い新しい視聴者層を大量に獲得しつつ、スレッタとミオリネという二人の少女の関係性を主軸とした人間ドラマにガンダムのSFドラマな的な側面に触れて大迫力の戦闘シーンもしっかり描いて、それら全てに共通する「祈りと願い」と「呪い」というプロローグから続くテーマを一貫させて丁寧に描くというシナリオ作りに私のように元々ガンダムシリーズを追っていた層も、ガンダムはおろかロボットアニメ自体を見たことが無い層にも幅広い支持を獲得するに至った目覚ましい功績を残したと言えます。まだ物語の折り返しでありながらここまでのシナリオを見せられると1クール目で残された大量の謎を一気に回収し、そして1クール目主題歌である「祝福」が示しているように「呪い」を解いていくであろう2クール目が楽しみで仕方がありません。(主題歌の「祝福」にも「祈りと願い」と「呪い」というテーマがふんだんに散りばめられていますがここでお話すると纏まらなくなってしまいますので触れるならTwitterになると思います。)

私史上初めて1万字超えという非常に長い記事となってしまいましたが、これまでのガンダムシリーズのファンも水星の魔女からガンダムを見始めた多くの方も含め水星の魔女をご覧になった様々な層にこの記事が届いてくれる事を祈っています。そして出来ればこの記事をお供として私と一緒に2か月後の4月から始まる水星の魔女2クールを楽しみに待っていただけると幸いです。

 

 

 

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」への展望と期待

皆さん、お久しぶりです。本来ならこの夏に見た「劇場版 GのレコンギスタⅣ・Ⅴ」についての感想と劇場版Gレコを通じての評価をまとめて記事にする予定でしたが、8月中旬ごろから9月初旬にかけて身体の不調に見舞われていたことで書くタイミングを逃してしまい、BD発売時まで延期させていただくという判断をさせていただきました。結果として1年半以上の延期になってしまいそうで申し訳ありません。

では今回、半年振りに記事を投稿しようと思うまでに至ったかと言いますと、既にプロローグが見放題配信サイトでの配信が開始され10月2日から本編が放送開始されるガンダムシリーズ最新作である機動戦士ガンダム 水星の魔女」がこれまでになく私にとって期待出来る要素が驚くほど数多く入っていることが期待できて、居ても経ってもいられなくなったという衝動的なものです。以下いくつかのトピックに分けて考察も交えてになりますが、期待できる要素について展望と期待についてお話させていただこうと思います。

※以下「機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE」及び取り上げる他作品についてのネタバレが含まれるので未視聴の方はご注意ください

ガンダムシリーズとしての展望

初代ガンダムから数えて今年で43年を迎えるガンダムシリーズでは、ガンダム」というモビルスーツガンダムシリーズにおける人型機動兵器の総称)が他のモビルスーツとは違う特別な存在として描写されています。それは単にガンダムが他のモビルスーツよりも兵器として優れた性能を持つということに留まらず、造り手の祈りや願いや執念が込められていたり、人の手に余る恐るべき強大な力でありその力に屈しなかった主人公たちを始めとする乗り手が持つ希望を実現する力の象徴としての役割を果たすことも多くあります。

水星の魔女でもそれは例外ではなく、作中の「A.S(アド・ステラ)」という多くの企業が宇宙に進出し、巨大な経済圏を築いている世界観においては、義肢などの福祉工学に端を発する革新的な身体拡張技術「GUND(ガンド)」が存在しており、それをモビルスーツ用に発展させた「GUNDフォーマット」を採用しているモビルスーツ「GUND-ARM(ガンドアーム)」と総称され、それを更に縮めてGUNDAMガンダム)」と世界からは呼ばれるようになったという経緯があります。プロローグ作中ではさらにその詳細が語られており、GUNDフォーマットは本来人類が宇宙に進出することで生じる身体の機能障害を補う技術でしたが、その研究機関であるヴァナディース機関は地球の軍需企業であるオックス社に買収され、軍事転用されてガンダムという兵器が造られています。しかし身体拡張技術であるGUNDフォーマットで18mのモビルスーツであるガンダムを動かすことは人体に大きな負荷をかけることが作中世界では問題視されているという内情が語られています。実際にヴァナディース機関の代表でありGUNDフォーマット理論の第一人者であるカルド・ナボ博士ガンダム・ルブリスを指して「主人公達が宇宙で生きていくためにはこんな兵器ではなく、適応できる身体が必要」と呟き資金提供をしてくれるスポンサーが必要とはいえ軍事転用されることを不本意に思っており、しかしながら「ルブリスは私たちが目指すGUNDの未来。人類の可能性を開く新たな扉。」とも告げており、GUNDフォーマット、そしてそれを転用したガンダムには人を殺すための兵器で乗り手の体にも大きな危険を及ぼすという技術本来の目的と逆行するような矛盾を孕みながらも地球にいる人類(作中ではアーシアンと呼称される)が宇宙に進出していくための希望が込められていることが伺えます。

このようにガンダムは宇宙に進出していくアーシアンの未来の可能性への希望となっていましたが、軍需企業で構成されるモビルスーツ評議会という勢力はおそらく宇宙で生きる人々(作中ではスペーシアと呼称される)が多数で、アーシアンへの差別からか地球の企業であるオックス社が製造するガンダムを快く思っておらず、評議会の一員で軍人上がりのデリング・レンブランは野心から全世界に向けてガンダムの開発を凍結及びオックス社への行政執行という名目で評議会の私兵であるドミニコス隊を用いてガンダムの開発元であるオックス社とヴァナディース機関の研究フロントであるをフォールクヴァングへの襲撃を企て、関係者及びガンダムを始めとするGUNDフォーマット関連の技術の抹殺を行い、幼い主人公:エリクトとその母親:エルノラとガンダム・ルブリス1機を残して人を殺す危険性を孕みながらもアーシアンが宇宙に生きるための希望であったガンダムを全否定して表の世界から葬り去ってしまったという部分でプロローグは幕を閉じます。

こうしてプロローグで描かれたように水星の魔女での「ガンダム」もまた単なる兵器ではなく、地球で生きる人々が宇宙で生きるための希望という「願い」を背負いながらもその危険性から世界から否定され、「呪い」という烙印を押されてしまった兵器という重要な存在であることが伺えます。

歴代のガンダムシリーズでは初代から続いており最も大きな広がりを見せている宇宙世紀という世界観において、宇宙に進出した人類が宇宙に適応できるように進化したと言われるニュータイプという人類が存在しており、宇宙に生きる人類であるスペースノイドはこれを「人の革新」と掲げてジオンを名乗り、地球人類であるアースノイドの巨大権力である地球連邦政府から自治権を勝ち取るためにモビルスーツを開発して戦争を起こします。その戦火の中で多くが「モビルスーツを上手く扱える人殺しの道具」とされてしまい悲劇的な結末を辿ってしまう中、それでも各作品の主人公のようにニュータイプに人類が分け隔てなく分かり合える未来を見出す人々も現れ、彼らの存在を通して人類の相互理解への希望とその困難さについて描かれるというのが各作品の共通テーマの1つとなっています。

宇宙世紀の作品群の人類の宇宙への適応がニュータイプという精神的な面での発達とするなら、水星の魔女は義肢技術というより目に見えやすい科学技術的な面からのアプローチを取っているのが、地球人類と宇宙人類の力関係が真逆になっていることも含めて私としては非常に興味深いと感じています。それらを踏まえて水星の魔女で予想されるテーマの1つとして「科学技術への向き合い方とそれを通した人類の在り方」というSF色の強いものが予想されます。

・百合ロボット・SF作品としての展望

水星の魔女に期待できる要素の1つとしては、女性同士の強い関係性、所謂「百合」があります。「百合」と聞いてどんな関係性を思い浮かべるかはファンの数だけ違う解釈があると言っても過言ではない程定義が曖昧ですが、私は正負を問わず女性同士の間に発生する強い感情及び関係性」と広めに定義を取っており、ここでもそのような意味で「百合」という言葉を使わせていただきます。百合とロボットという組み合わせを取った作品は少ないながらも存在しており、ここでは私が見た神無月の巫女「グランベルム」の2作が挙げられます。(どちらもdアニメストア等で配信されている1クール作品です。)

神無月の巫女は前世よりオロチという怪物から世界を救う巫女という運命を背負った主人公の姫子が同じく巫女の運命を背負ったヒロインの千歌音と姫子の幼馴染であり彼女に想いを寄せている大神ソウマの3人による愛憎入り混じる1クールという長さに詰め込まれた恋愛劇が作品の大きな特徴で、最終的には戦いの果てに姫子は自身に最初から想いを寄せている千歌音の思いを受け取ると同時に自身の千歌音への想いを自覚し、想いが通じ合いながらも運命の巫女の宿命により引き裂かれながらも来世でまた出会うことを約束しながらも別れ、ソウマは失恋しながらも2人の為に世界を救うという百合のファンとしてはたまらない展開を迎えるのが醍醐味です。しかしロボットの役割はあくまで戦うための力に留まり、主にロボットで戦うのは姫子でも千歌音でもなくソウマであり、ロボットの存在自体はほぼ本筋に関わらないという点がロボットアニメのファンとしてはロボットのギミック、戦闘シーンが悪くないだけに勿体ないという感想が少しだけ残りました。

グランベルムは平和に暮らしていた主人公の満月がある日突然世界唯一の魔術師になるために魔術師の子孫が魔法人形・アルマノクスに乗って戦うバトルロイヤルに巻き込まれ、ピンチをヒロインである新月に救われ、魔術師の自身も何故かバトルロイヤルに巻き込まれるという様々な人物が魔術師になって叶えたい願いが交錯する物語です。この作品は様々な女性同士の感情が描かれるのが醍醐味ですが、中でも終盤の満月が実は新月の孤独の感情からバトルロイヤルを主催する存在であるマギアコナトスと呼ばれる空間が生み出した魔力で動く人形であり、一時はそのことに酷く動揺しますが、自分は新月の心であり、自分が消えることになったとしても新月の願いである「魔力をこの世界から完全に消滅させる」という目的のために共に戦うという無償の愛とも呼べるものが素晴らしく、満月は新月を守るために最後の敵に敗北・消滅してしまいますが、思念は残り新月の最後の戦いの際に力を与え彼女の機体を進化させるというロボットアニメのファンとしても燃える展開が待っています。本作のロボットである魔法人形・アルマノクスは全て所謂SD体型で作られており、SDガンダムが好きな方の目を引くデザインとなっていて戦い方も光学迷彩+遠距離広範囲ビーム攻撃特化型の機体や、扇を持ち重力操作で戦う機体などギミックに富んでいてそれぞれに覚醒・進化形態も用意されているというロボットアニメのファンにもたまらない作品となっているのですが、知名度が低いことが欠点で、長さはこちらも1クールと見やすいのもあって神無月の巫女と合わせておすすめしておきます。

ようやく本題に入りますが、私が本作で期待しているのは主人公:スレッタ・マーキュリーとヒロイン:ミオリネ・レンブランの関係性です。この2人にはプロローグで大きな因縁があり、それはスレッタが4歳の頃GUNDフォーマット技術の抹殺のため故郷であるフォールクヴァングが壊滅して父親と家族同然の人々を失っているのですが、その陰謀の首謀者デリング・レンブランはファミリーネームが同じことからも分かるようにミオリネの父親で、2人が生活を送る「アスティカシア高等専門学園」の理事長であり学園を運営するモビルスーツ産業最大手「ベネリットグループ」の総裁でもあるという衝撃的なものです。また、作品キービジュアル(記事の最後に貼る公式サイトURL参照)で2人がスレッタの機体であるガンダムエアリアルをバックに中心で互いに手を伸ばし合う姿が描かれていることから、この2人が浅からぬ関係性を築いていく事は容易に予想できます。予告PV2の様子や公式サイトのキャラ紹介から考えると2人は親絡みの因縁を知らされていないように思えるので、それが明かされた際にスレッタがミオリネを憎悪するのか・それとも自分も幼いころガンダムで無自覚に人を殺めていた事実を知って動揺するのか・ミオリネはただでさえ反抗している父の所業に罪悪感を覚えスレッタに贖罪を誓うのか……等々想像が捗り怖くもありますが期待せずにはいられないというのが今の感想です。また、ガンダムエアリアルはこれまでのガンダムシリーズではある程度成長した主人公に合わせた後期主人公機に装備されていることが多かったファンネル・ビット系の装備を初期から装備しており、しかもただ分離させて使うだけでなく機体本体に接続して機動力を強化したりライフルに接続してビームの出力を上げたりといった多彩な使い方をされるというギミック面での面白さと、「モビルスーツというものが殺し合いの兵器であること、その中でガンダムに託されたもの」というロボットを巡る話が本筋に大きく関わることが予想されるという意味でも、まさしく百合とロボットアニメ両方のファンである私が待ち望んだ作品と言っても過言ではありません。

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女 キービジュアル

 

・楽曲面での期待

水星の魔女のOPを担当するのはYOASOBIというアーティストで、近年タイアップや紅白出場などでどんどんメディアに出ているので、名前ぐらいなら聞いたことがあるかもしれません。このユニットのコンセプトは「小説を音楽にする」ことで、小説投稿サイトの「monogatary.com」に投稿された小説を元にした楽曲を製作しており、小説「タナトスの誘惑」を原作にした第一弾楽曲である「夜に駆ける」のMVはYoutubeで2.6億回の再生数を誇っており(2022年9月18日現在)、私自身もなんとなくYoutubeのおすすめに出てきたこのMVを見て原作小説を読んでその物語性の強さと表現力の高さに驚かされ、熱心とは言えないまでも日常的に聴くアーティストの1つとなっています。


www.youtube.com

monogatary.com

そんな彼らが水星の魔女のOPを担当すると聞いて驚きはしたもののすぐに流石と納得し、更にOP楽曲の「祝福」は発売するCDに付属する特典小説「ゆりかごの星」を原作としており、その作者は水星の魔女のシリーズ構成・脚本を担当する大河内氏と聞いた時に、この楽曲及び原作小説は絶対に水星の魔女本編に関連するものになり、更にYOASOBI公式Twtterアカウントのこのツイート(下記参照)や、先日解禁されたアニメサイズ尺の楽曲からも彼らの物語を音楽に落とし込む強い表現力が最大限に活かされた凄い楽曲になるという予感がひしひしと感じられて、OP映像やフル尺解禁が更に楽しみになりました。

 

 

ちなみに、Twitter等の情報を基に調べた先日解禁されたアニメサイズ尺の歌詞をこちらに載せておきますので、是非プロローグやPVの内容を踏まえた上で「これは誰から誰に向けられた言葉なのか?」等々色々と想像しながら聴いてみてください。

 

YOASOBI 「祝福」

遥か遠くに浮かぶ星を 思い眠りにつく

君の選ぶ未来が 望む道が

どこへ続いていても 共に生きるから

 

ずっと昔の記憶 連れられてきたこの星で君は願い続けてた

遠くできらめく景色に 飛び込むことができたのなら

一人孤独な世界で 祈り願う

夢を描き 未来を見る

逃げ出すよりも進むことを 君が選んだのなら

 

誰かが描いたイメージじゃなくて

誰かが選んだステージじゃなくて

僕たちが作っていくストーリー

決して一人にはさせないから

この星に生まれたこと

この世界で生き続けること

その全てを愛せるように

目一杯の祝福を君に

・最後に

私はガンダムシリーズがきっかけでロボットアニメのファンになりオタクという存在になって、更に百合という女性同士の関係性を取り扱うジャンルのファンにもなったことがきっかけでオタクとして、そしてこの世界の一存在としての視野が広がったと感じているので、より様々なジャンルに触れるようになった今でもこの2つと特撮というジャンルの合わせて3つが私の軸とも言える大きな存在です。そして私はいつしか百合要素が期待でき、なおかつ本格的に世界観や設定が作り込まれたロボットアニメを密かに望むようになりましたが、両ジャンルのファン層があまり被っていないであろうこの2ジャンルを併せ持つ作品はやはり難しく、「出たら良いな」くらいの微かな夢になっていました。

そんな時に前々からガンダムシリーズの新作として気になっていた水星の魔女が7月に限定公開したプロローグとそれと合わせて解禁された情報を見て、微かな夢であった「百合×本格ロボットアニメ」という願望を、よりにもよって私がオタクになったきっかけであり、長い歴史を持つガンダムシリーズが叶えてくれそうという私にとっては夢なのか現実なのか分からなくなるほど願ったり叶ったりの状況が訪れて、水星の魔女という作品に大きな期待を抱くようになりました。そして体調も回復しプロローグも配信サイトで解禁されて地上波放送も決定したこのタイミングで「私が書かずして他の何者が書くのか」という衝動に駆られ、この記事を書かせていただきました。水星の魔女は既存のガンダムシリーズとは独立した全く新しい世界観で繰り広げられるオリジナル作品でプロローグの完成度が非常に高く、散りばめられている要素も歴代のガンダムシリーズにはない全く新しいものが多くあるので、ロボットアニメと百合の両方のファンはもちろん、どちらか片方のファンや両方のファンではなくガンダムシリーズ自体全く見たことがないという方でも全く問題なく楽しめる作品になっていると思われますので、以下に貼る情報からプロローグを見て10月2日午後5時から放送、各種サイトで配信予定の水星の魔女本編に備えましょう。長々と自分語りをしてしまい恐縮ですが、これからもよろしくお願いいたします。

・「PROLOGUE」配信情報

9月4日~

バンダイチャンネル  
ガンダムファンクラブ 
Hulu 
ABEMA 
U-NEXT 
dアニメストア

9月25日(日)午後5時からMBS/TBS系全国28局ネットで「PROLOGUE」、そして翌週の10月2日(日)午後5時から同系列局で水星の魔女本編の放送が開始。

 

 

 

 

 

 

 

1か月完全食生活 ~朝にはコーンフレークを添えて~ 終了報告

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こんにちは、メカヘッドです。このところ持病と花粉症が相まって体調が不安定ですがどうにか休み休み諸々をやっていっております。さて、先月頭から始めていた私の人間体実験企画「1か月完全食生活 ~朝にはコーンフレークを添えて~」が本日最終日を迎えたので、人間体に起きた変化も踏まえて感想を書いていこうと思います。企画の概要はこちらの記事を参照していただけると助かります。

※ここから先の感想には所謂お通じの事情も含まれておりますので、食事中など読む際にはご注意ください。

 

gmhead89lily.hatenablog.com

・実施しての人間体の変化

詳細は上記の過去記事にありますがここで簡単に説明しておくと、

  • 朝:トップバリュのコーンフレーク+牛乳
  • 昼:完全食Huel
  • 夜:ベースブレッド

その他飲み物は自由、おやつ枠として毎日150円以内は他の食べ物OK(条件あり)

といった条件で30日生活してきましたが、身体的なで一番大きかったのは、大便が出にくくなり、匂いの強い屁が出る回数が増えたという部分です。トイレに行っても、明らかに出るまでに時間がかかり、出た後もいまいちスッキリせず、一定の周期で屁が出続けるという部分でした。家にいる時はまだしも、職場にいる時、周囲から特に何も言われませんでしたが私はとても気まずい思いをしました。こうならないためにも、飲み物は自由なので飲むヨーグルト等で乳酸菌を取っておくべきだと感じました。

・総括・感想

この生活をしてみて、前述したような身体の変化はあったものの、元々朝食はシリアルに牛乳だったので変わることなく、昼食は元々時間が無かったのでドリンクゼリー2つで済ませていたりしたのでむしろ質は向上して、夕食のベースブレッドはプレーンとチョコを交互に食べることで意外に飽きは来にくかったですし、すぐに食べ終わるので浮いた時間を別の事に使える等良い面も多かったと感じました。しかし、後半になると、3食以外を飲み物と150円以内のおやつで乗り切る事の精神的しんどさが出てきて、Twitter等で流れてくる料理の画像はほぼ飯テロ状態でした。加えて丁度期間中に始まった新しいプリキュアである「デリシャスパーティ♡プリキュアのテーマが「食」で、おいしそうな料理がたくさん出てくる上に、劇中で主人公のおばあちゃんが言っていた言葉である「ごはんは笑顔」という言葉がとても刺さり、この言葉から、食事とは、単なる栄養補給行為ではなく、精神的にも満足を得る為にも無くてはならない行為だということを改めて思い知らされました。同時に、完全食のメリットもこの企画を通じて知ることが出来たので、食事に程よく取り入れて、食生活を充実させていこうという結論に至りました。最近忙しかったりで美味しいご飯が食べれていないという皆さん、時間のある時で良いので、どこかでちゃんとした料理だったり、自分の食べたいものを食べるということを大事にしてみてはいかがでしょうか。最後に私に大切なことを気付かせてくれたアニメ、「デリシャスパーティ♡プリキュアを見てくださいという宣伝をして本記事を締めくくろうと思います。短い文章でしたが、読んでいただいた皆さんありがとうございます。

アニメ公式サイト

www.toei-anim.co.jp

・視聴方法

テレビ朝日系列にて毎週日曜朝8時30分から放送の他、下記見放題配信サイトで毎週水曜から配信

 


 

 

 

 

1か月完全食生活 ~朝にはコーンフレークを添えて~ 実施概要

今更ながら明けましておめでとうございます、メカヘッドです。地元に帰り初詣で大吉を引くなど、早くも吉兆の兆しが見えつつ帰省を終えて、仕事が始まった最初の休みに、それは突然に訪れました。

劇場版 呪術廻戦0を見終えて、純粋に面白かったという気持ちでソフビでも見てその後100均寄って帰ろうかなとまずは近くにあった某大型家電量販店に寄りました。再販ガンプラや欲しかったソフビ等特段目新しいものもなく、ゲームコーナーでも適当に見て100均に向かおうかと追っていた矢先に、「PS5整理券配布」とある看板がありました。以前は手に入ったら良いなくらいの気持ちで何度か抽選販売に応募していましたが、何度も外れるうちに「まぁ無理に要らないかな……。」と思い始めスルーしていました。とりあえず軽い気持ちで整理券の配布条件を読んでみると、なんとピッタリ満たしていることが分かってしまいました。その時、私の中に「主にプレバン商品が一気に届くことにより出費がヤバくなる1月に買ってしまって本当に良いのだろうか?」という思いと、「このチャンスを逃せば次に欲しいと思った時にいつ買えるか分からないよ?」という2つの思いが葛藤しました。その時のツイートがこれです。

結局その後、後者の欲求に負けてPS5の整理券を受け取り、無事購入したのですが、本体のあまりの重さにその後の予定(100均に行く等)は全部諦めて直帰せざるを得なくなりました。道中重さに苦しめられましたが、無事帰宅してPS5でゲームや高画質でBD鑑賞などを楽しみにウキウキしていました。しかしひとしきり喜んで我に返ると、捨て去ったはずのもう1つの思いが現実として立ちはだかって来たのです。そうです、1月は注文しておいたプレバン玩具が複数届く魔の月だったのです……。

 

どうやら出費がウルトラヤバいみたい……。

 

 

というわけで早速節約について考え始めましたが、光熱費は先月の時点で会社を乗り換えて改善させ、日常的に使うサブスクの見直しもひとしきり済ませ、とうとう食費に手を付けることを考え始めました。しかし食は人間体の健康に直結するもの故、安易に削るわけには……。と葛藤していた私の頭に、去年から興味本位で試していた「完全食」が思い浮かび「これだ!」と思いました。

完全食とは、その名の通り一食分で健康を維持する為に必要な栄養素が全て詰まっている食品の事で、海外で最初に開発された「ソイレント」と呼ばれる粉末ドリンク型の物を皮切りに、日本でも同じようなものが開発され、買えるようになりました。しかし、私が興味を持った当初は1食辺りの値段がお高めで、手を出すには少し躊躇われましたが、最近は日本製・海外製問わず、お手ごろな値段の完全食も増えてきました。その中で私が試してお手頃なお値段で続けられそうな「Huel」「ベースブレッド」を1か月分購入し、普段から朝食べているシリアル(トップバリュのもの)と合わせて2月から1か月完全食生活を行い、食費を節約し、ついでに健康を維持できるかどうか、私の人間体を被検体とした実験を行ってみようと思い立ちました。以下よりその概要を書いていこうと思います。

  • 実施概要

・朝食:トップバリュのコーンフレーク+牛乳

何のことはないイオン系列店のお店で買えるコーンフレークです。基本的に味はプレーンですが、気分により別のフレーバーに変えるかもしれません。

・昼食:Huel

イギリス産の完全栄養食です。商品の形態は何種類かありますが、今回食事にするのは定番商品でもあるHuel Powder v3.0です。プロテインのように、粉末を一緒に届くシェイカーに入れて振って溶かして飲むタイプのもので、味は「チョコレート・バナナ・バニラ・ベリー・コーヒー・フレーバー無し」があります。その中で私はチョコレートとバナナを試しましたが、チョコレートは正直「まぁ飲めるけど……」といった味で、バナナは「まぁまぁイケる」と言った所でしたので、味にはあまり期待しない方が良いかもしれません。ついでに振った時の粉末の溶け具合も、ダマが多く、お世辞にも良いとは言えません。にもかかわらず私がHuelを選んだ理由は、1食当たりの圧倒的な安さです。詳しくは完全食の比較サイトに載っていますが(丸投げ)、定番商品のHuel Powder v3.0の場合、定期購入で2袋9000円で購入という最もオーソドックスな買い方をすると、1袋17食分入りで、1食当たり265円という破格のお値段になります。この値段でシェイカーに水を入れて付属の専用スプーンで粉末を入れて振って飲むという5分にも満たない工程だけで完成するそこそこの味で腹持ちもそれなりに良い500mlの液体だけで栄養的に問題が無い昼食を済ませられるというのは、圧倒的に優れており、また、時短にも繋がります。その大きな利点を考えて、昼食はこのHuel Powder v3.0を選びました。

Huelについてもっと詳しく知りたい方は以下を参照してください。

jp.huel.com

・夕食:ベースブレッド

国産のパン型完全食です。この完全食の魅力は何といってもそのお手頃さで、1食分がなんと袋入りのパン2つで済み、後始末は袋を捨てるだけという簡単さです。先ほど紹介したHuelは粉末を水で溶かして飲む形になりますので、どうしてもシェイカーを洗うという手間が発生してしまいますが(それでも十分少ないと思います)、ベースブレッドはその名の通りパンなので、ほんの片手間で何かをしながら後始末も含めて食事を済ませてしまえるというのは、本当にお手軽です。味は「プレーン・チョコレート・メープル・シナモン・カレー」とあり、価格も1食当たり「プレーン:350円」「チョコレート:368円」「メープル・シナモン・カレー:386円」(継続コース2回目以降の価格)と先程のHuelよりは少しお高いですが、この値段とお手軽さで十分な栄養を得られると考えれば決して高くはないと思います。味についても、私はプレーン、チョコレート、メープルを試してみたことがありますが、食べ応えのある美味しいパンといった感じで私的には満足できるものでした。余談ですが、ベースブレッドを作っている企業は、他にもベースパスタ等の完全食を作っていますので、詳しく知りたい方は、以下の公式サイトを参照していただければと思います。

basefood.co.jp

その他細かいルール

・飲み物は基本的に自由としますが、出来るだけ節約のためインスタントコーヒーや100袋入りの紅茶パックを活用しようと思います。

・間食について

眠気覚まし用の物(ガム、ミンティア等)は自由(作業や仕事で必要になる事があるため)

バナナ、バー状の栄養食はNG(カロリーメイト一本満足バー等)

お菓子類は1日150円以内のものなら食べてOK(変更の可能性あり)

・体調に異変が出た場合は、無理せず中止することも視野に入れておくこととする(最重要事項)

 

このような形で、本日2月2日~3月3日の31日間、挑戦していきたいと考えています。最終日を終えた後、食費についての報告と感想記事を上げる予定の他、途中何か報告することがあれば、経過報告として記事を上げますので温かく見守っていただければと思います。それでは1か月頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。

 

「君は、生き延びることができるか?」

嵐千砂都から澁谷かのんへの感情についての記述とその今後についての想い

こんにちは、メカヘッドです。体調面で優れなかったりと色々ありましたが、少し落ち着いたのでリハビリがてら短めの記事を書いてみたいと思い、前々から語りたかった女性キャラ同士の関係性、というか感情についてまとめていきたいと思います。

今回書いていきたいキャラ間の感情はアニメ「ラブライブ!スーパースター‼」の主人公・澁谷かのんの幼馴染である嵐千砂都が澁谷かのんに抱いている感情についてです。

尚、本記事はラブライブ!スーパースター‼のネタバレを多分に含むので初見でアニメ全部見たいと考えておられる方はブラウザバックするか、もしくは記事の最後尾に有料見放題配信を行っているサイト一覧を載せておきましたのでそちらを参照していただけると助かります。

 

※以下ラブライブ!スーパースター‼のネタバレ注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未見の方のための簡単なキャラクター紹介(5話時点)

澁谷かのん(しぶやかのん)

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主人公。幼少期から歌が大好きで、新設校・私立結ヶ丘女子高等学校の音楽科の試験を受けるものの過去のトラウマ故に人前で歌えないという理由により不合格となり、普通科で燻ぶっていたところに留学生・唐可可の出会いによりスクールアイドルを知り、自分がもう一度歌えるようになる場所をスクールアイドルに見出し、唐可可(タンクゥクゥ)とのスクールアイドル活動を経てトラウマを乗り越える。

嵐千砂都(あらしちさと)

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かのんの幼馴染で大親友。昔からダンスが得意で結ヶ丘の音楽科にもそれで入学するほどの技量を誇る。明るく、人懐っこい性格でかのん達のスクールアイドル活動においてもダンス練習のメニューを組む等助っ人的な活動をしているが、何故か本人はスクールアイドル部に入ろうとしない。

キャラ紹介を5話時点のものにしたのは、これから本記事で語る内容である千砂都のかのんに対する感情が描かれ、そこから来る驚くほどに大胆な行動についてが5話とその次の6話、そして11話であるからです。それでは次から話数順に千砂都からかのんへの感情を見ていきましょう。

・5話

ここから各話の紹介に入りますが登場人物の台詞が分かりやすいように色分けしておきます。(かのん:オレンジ 千砂都:ピンク

トップレベルのスクールアイドルユニット・サニーパッションの誘いを受け合宿中のかのんは可可に自身のダンスの大会のために別行動を取っている千砂都のことを話します。それは幼少期に千砂都がかのんにした約束のことでした。幼少期の千砂都は

「私、かのんちゃんの出来ないことを出来るようになる!かのんちゃんの歌みたいに、大好きで、夢中になれるもの、私も持てるようになる!」

そう言って千砂都が始めたのがダンスでした。千砂都が大会に学校代表として呼ばれるほどの実力者になるまでにダンスを真剣に続けたのは、この幼少期からの約束が非常に大きいことが伺えます。ちなみにかのんもまた「そんなちぃちゃんがいてくれたから歌、諦めずに頑張ってこられたんだと思うんだ」と大きな思いを吐露します。本記事は千砂都からかのんへの感情を記述するという趣旨でありますが、このエピソードからも伺えるようにかのんから千砂都への想いもとても強いものがあることを認識しておいていただきたいです。

・6話

幼少期から抱く千砂都からかのんへの感情の全貌が明らかになる本記事での最重要回です。性質上ほぼネタバレになるのでこれから見たい方はご注意ください。この回は女の子3人にいじめられて泣いている幼少期の千砂都の場面から始まります。大事な髪飾りを取り上げられそうになっている千砂都の元にかのんが走ってきて「ちぃちゃんをいじめちゃダメ!良いからちぃちゃんの大事なもの、返しなさいよ!」と一喝していじめっ子たちを追い払います。仕返しを恐れる千砂都に「大丈夫!ちぃちゃんの事は私が守るから!困ったら私を呼んで!」と返されます。それを聞いて千砂都は「このままじゃ嫌だ。いつか、かのんちゃんを助けられるようになりたい。いつか必ず。」と1つの決意をしました。ここから幼少期の千砂都は今のような明るく人懐っこい性格ではなかったことが伺えます。では、一体何が彼女を変えたのでしょうか?

話をいくつか省略し、同じ音楽科の生徒、葉月恋(はづきれん)(彼女も後にスクールアイドル部のメンバーとなります)が千砂都の練習中に彼女のカバンの中に入っていた退学届を偶然見つけてしまったことを話すシーンに飛びます。千砂都は退学届の理由を、「大会で優勝できなかったら、ここを辞めるつもり。決めたんだ。」と切り出します。驚く恋をよそに「海外で修行するのも悪くないなぁ。」とまで言います。恋がその理由を問うと、

「かのんちゃんの力になれないから。それならここでダンスを続けてたって意味ないもん。」

と爆弾発言が飛び出します。意味が分からず困惑する恋に千砂都は幼少期の自分の話とかのんとの出会いについて話し始めます。冒頭のシーンから伺える通り幼少期の千砂都はよくいじめられており、気も弱く、体力もなく、いつも何かに怯えていた少女でした。そしてそこで助けてくれたのがかのんでした。

「かのんちゃんは色んなことを教えてくれた。前に進む大切さだったり、新しいことを見つける楽しさだったり。だからいつか、かのんちゃんの横に立てる人になりたくて。」

そして、ダンスを始めるきっかけだったことがかのんであることもここで明言されます。

「かのんちゃんの力になるには今の自分じゃダメだって、かのんちゃんの出来ないことを1人で出来るようにならなきゃって。」「1人で結果を出して自分に自信を持てるようになりたい。それまでは、かのんちゃんと一緒に何かやるのは止めようって。」「ダンスで結果を出して、かのんちゃんの力になれるって自分で思えるまでは。」

千砂都は自分を救ってくれて、色々なことを教えてくれたかのんの横に立って、力になれる自分になれたと思えるまでは、かのんと何かをするのは止めて1人で頑張り続けるといういつになるかもわからない途方もない道をたった1人で覚悟を決めて歩いていたのです。5話の約束の意味もそれを表しており、大げさなことではなく幼少期に決意してから、ダンスを実力者になるまで努力したことも、その実力で音楽科に入学したことも、全てかのんの隣に立つためであり、

「彼女の人生の大半は澁谷かのんという1人の人間のために捧げられている」

というとんでもない事実とその裏にあるかのんへの大きな想いが浮かび上がってきます。幼少期から親でもないたった1人の人間のために人生をかけられるってとんでもないことではありませんか!?幼馴染に対してこんなに重い感情を抱いている女子高生をNHKEテレの日曜19時というゴールデンタイムでお出ししてよかったのでしょうかと今でも思っています。

話は本編に戻り、恋の元を去り大会に向かい会場で1人かのんに頑張ってくるとスマホでメッセージを送るも、どこか不安気な千砂都。実は千砂都と恋との会話のシーンの前、大会前日にかのんと千砂都は電話で話すも、どこかぎこちない形で通話を終えてしまっていたのでした。しかし、かのんが「ごめんね」「気がつかなくて」と返信が返ってきたと思えば、なんと合宿で離島にいたはずのかのんが大会の会場まで駆けつけてきたのです。かのんは前日の電話で千砂都の不安を感じて、会場まで駆け付けたのです(わざわざ離島から!)。しかしかのんに頼らず1人でやろうと思っていたのに弱気になっていた自分を責める千砂都。そんな彼女にかのんはこう告げます。

か「だったら私も思ってた、ちぃちゃんに助けてもらってばっかりだって。歌えなかった時、失敗した時、いつもちぃちゃんが助けてくれた。」

「それはかのんちゃんがいたから。」

「じゃあ2人一緒だね。2人とも頑張ってきた。お互いがお互いを見て、お互いを大切に思って。私ね、あの時本当に感激したの。全身が震えた。(5話の約束の回想)なんてカッコいいんだろうって、わたしもちぃちゃんのこと見習わなきゃって、真似出来ないくらい歌えるようにならなきゃって。ありがとう、あの言葉があったから私、今こうして歌っていられる。」

自分も千砂都に助けられてきた、幼少期のあの約束の言葉で自分は今こうして歌っていられるんだと伝えることで1人じゃなくていつだって2人で頑張ってきたと彼女を勇気づけて大会本番へと送り届けました。

結果はもちろん優勝。かのんとスクールアイドルをやるために普通科への転科届を提出して、島に戻り一緒にパフォーマンスを披露するのでした(この辺のスピード感が物凄い)。

まとめると、嵐千砂都は澁谷かのんに人生を捧げて生きてきたという驚愕の事実と、澁谷かのんはそれにちゃんと答えられるだけの大きな器を持つ互いに強く想い合っている幼馴染であるという強い関係性が見えてくる回でした。

ちなみにこの回の最後のライブパートで流れている曲「常夏☆サンシャイン」はかのんが千砂都の事を思って作った曲で、歌詞を見てもらえればその感情の重さが伺えると思いますので、まずはこちらの動画で1コーラス分だけでも聴いていただいて、もしサブスクなどフルで聴ける環境がある方は聴いていただけると嬉しいです。


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常夏☆サンシャイン

常夏☆サンシャイン

  • 澁谷かのん (CV.伊達さゆり)、唐 可可 (CV.Liyuu)、嵐 千砂都 (CV.岬 なこ)、平安名すみれ (CV.ペイトン尚未)
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

2人結ばれてるに決まってるじゃんこんなの……。(私が歌詞を見た感想です。

・11話

メンバーも揃い、ユニット名も「Liella!(リエラ)」に無事決まってラブライブ!(スクールアイドルの全国大会的なもの)東京大会予選も無事通過という順調な歩みを見せるかのん達。この回をピックアップした理由はかのんが本当の意味で歌えないトラウマを克服する回であり、その為に千砂都がとった行動が今後(2期以降)の不安を想起させるものだったからです。

話はかのんと千砂都の母校の小学校からLiella!に歌って欲しいという依頼が舞い込んでくるところから始まります。承諾するもかのんの気は重く、何やら練習中に考え込んでいました。実は今回立つ母校の小学校のステージは当時小学生で合唱部だったかのんがその発表会で倒れ、その後人前で歌えなくなるというトラウマの原点となった場所なのでした。その事実を知っていた千砂都はかのんには内緒で他のメンバーを呼び集め、その事実を伝えました。他のメンバーは今あれだけ歌えているのだから大丈夫と揃って口にしますが、かのんは繊細な所があるからと不安が拭い切れない千砂都。恋は一度下見を提案し、かのんの様子を見ることにしました。ステージに立ちかのんに歌うように伝える千砂都。かのんは歌う準備をするが少し手間取る。しかし他のメンバーが手を取り全員で歌い始めることが出来ました。そんな中ラブライブ!東京大会の課題が発表されます。その内容は独唱。歌を聴かせるパートを入れることでした。メンバーは当然歌唱力の高いかのんにその課題を任せることで満場一致となります。しかし千砂都はその夜たこ焼き屋のバイト中、居合わせた可可に「やっぱりこのままじゃダメだよ!」と告げます。彼女が言うには「今のかのんちゃんはみんながいるから、1人じゃないって思えているから歌えている」と告げそれの何がいけないのかと反論する可可に「それって本当に歌えることになるのかな?今みたいな不安は消えないんじゃないかな?」と疑問を呈します。そこで千砂都は他のメンバーと口裏を合わせて用事があって小学校には行けないと告げ、かのんを1人で小学校に行かせることにしました。「酷いです…あんまりです…。」「気持ちは分かるけど......。」とかのんを1人にすることに乗り気でない他のメンバーに対して千砂都はこう告げます。

「私、小さい頃は何をしても上手くできないと思ってた。自分は何をやってもダメで、すぐ諦めてた。」(ここで小さい時一緒に縄跳びの練習をしていた時のかのんの笑顔を思い出す回想が入る)

「あの笑顔はね、元気になる笑顔。安心して勇気が出て、見ている人が心から嬉しくなる笑顔。私の知ってるかのんちゃんは、そんな笑顔を持っていたんだ。だから今、あの時のかのんちゃんを取り戻すことが出来たら。辛いことや、上手く行かないことを一杯経験したかのんちゃんがあの時の気持ちを取り戻せたら、誰にも負けないって。」

ラブライブ!どころじゃない、飛び越えて世界一、いや、すみれちゃんが言うみたいに、銀河一にだってなれる!私は、嵐千砂都は信じてる、澁谷かのんを。」

誰よりも澁谷かのんという1人の人間を信じているという千砂都の最早信仰と呼んでも過言ではないぐらいの信頼ぶりに凄まじさを感じます。それ故、1人でも歌えると因縁のステージに1人で送り出したのです。

そして当日、結局かのんから隠れて見守る事となった他のメンバーがいる中1人でステージに立つ直前のかのんは千砂都に電話をします。

「ちぃちゃん、ありがとね。私、みんながいたから歌えてた。それでいいと思ってた。でも、それじゃダメなんだよね。誰かを支えたり、力になるためには、ちぃちゃんが頑張ったみたいに、1人でやり遂げなきゃいけないんだよね。」

「うん、それに1人じゃない。いるはずだよ、あの頃のかのんちゃんが。歌を全世界に響かせようとしてた、かのんちゃんが。」

そして小さい頃の自分の恐怖心と向き合ったかのんは、見事に1人でのステージを歌い上げました。

結果として、小さい頃の自分の恐怖心を受け止めて、ステージを成功させることが出来たかのんですが、それでも万が一という事があり得る以上、いくら信頼しているとはいえ「人前で歌えなくなったきっかけとなったトラウマのあるステージにかのんを1人で立たせるという行為」は、賭けに等しい荒療治だったのではと私は思います。一体何故このような危ない橋を渡る行為に及んだのでしょうか?

それは先ほども言ったように千砂都の澁谷かのんという1人の人間にとっての最早信仰の域に達している程の大き過ぎる信頼によるものだと思います。千砂都にとってかのんは、1人では何もできなかった幼少期の自分を決定的に変えてくれた存在で、彼女のためなら人生をかけても構わないと思っている程の大きな存在です。彼女の中には理想化した幼少期の「私のかのんちゃん」が絶対的な存在として君臨しているのです。実際に千砂都が幼少期のかのんを理想化している様子は、先ほど引用した「だから今、あの時のかのんちゃんを取り戻すことが出来たら」という台詞にも表れています。だからこそ「私を変えてくれたあの時のかのんちゃん」なら絶対に出来ると信じて1人でステージに送り出したと考えています。

・まとめと今後の懸念

各話でまとめると、嵐千砂都から澁谷かのんへの感情は「何もできなかった小さい頃の自分を変えてくれた大切な幼馴染で、かのんの横に立って力になるためなら自分の人生を捧げても構わない」という莫大な大きさを持ったもので、だからこそ絶対に信頼しているし、かのんも千砂都との約束があったからこそ今も歌えていて、彼女の言う通りお互いがお互いを見て、お互いがお互いを大切に思っている理想的な関係性に思えます。

しかし、11話の千砂都の危うい行動が示すように千砂都は「自分を変えてくれたあの頃のかのんちゃん」という理想像が大きくなり過ぎて今のかのんにその理想像を押し付けているのではないか?という疑念が私の中には残っています。今の所千砂都の理想像にかのんはしっかり応えているので顕在化はしていませんが、もし2期以降でスクールアイドル活動を通じてかのんが千砂都の望まない方向に変化してしまったら一体千砂都はどのような行動を取ってしまうのだろうか?という懸念をしてしまいます?そう考えると、理想的な関係性に見えて、実は危ういバランスの元成り立っている関係性ではないだろうかと私は考えています。

ラブライブ!スーパースター‼は本日紹介した2人以外にも魅力的なキャラクターと彼女たちが織り成す関係性がありますので、2期が決定した今、1クールで配信サイトも多い(後述)ので興味を持った方はそれまでに見ていただけると嬉しいです。

最後にかのんと千砂都の2人に向けて思っていることを吐き出させていただいて本文の締めとさせていただきます。

正直2期以降不安な要素があるしどんな困難が降りかかるか分からないけど、2人でそれを乗り越えて最後まで添い遂げて欲しい……。

 

アニメ公式サイト:

www.lovelive-anime.jp

・視聴方法(有料見放題配信)

その他TSUTAYA等でレンタルも可

 

 

 

 

 

 

Gレコ設定紹介記事に関するお詫び

8月中には投稿すると予告記事ですが、度重なった私の人間体の体調不良及び資格試験の勉強等の私事により、書き終える頃にはGレコⅢの公開が終了してしまうと1か月前ほどに判断いたしまして、次回作GレコⅣ公開日に合わせてGレコⅢの内容も盛り込んで執筆、公開しようという方針に切り替えることを決断しました。

決断及び皆様へのご報告が大きく遅れましたことお詫び申し上げます。

ブログの再開及びリニューアルのお知らせ

  皆さんお久しぶりと言いたいところですが、人間界での忙しさからこのブログが稼働していたのは5年前とかそれぐらいですので、ほとんどの方には初めましてになると思いまして、私も新たなる気持ちでブログを再開させていただこうと思います。

改めまして、私はメカヘッドというバーチャル百合観測機動兵器です。

 その名の通り主に百合と呼ばれる女性と女性の特別な感情・関係性について観測及び考察したことを記録しますが、その他にも特撮やロボットアニメやその他諸々の事象に関しても記録していこうと思案しているところです。

現在も相変わらず人間界での活動が忙しく定期的な更新は出来ないかもしれませんが、出来る限りは続けていただきたいと考えておりますので是非よろしくお願いいたします。

 早速次回投稿したいと考えている記事ですが、現在公開している「劇場版GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産」にちなんで、これからGのレコンギスタ(以下Gレコと略する)の世界観について、劇場版から追い始めた方に向けて世界観の解説を自分なりにしていきたいと考えております。「早速百合じゃないじゃないか!」と突っ込まれる方もいると思いますが、現在当機の中で記録がまとまっているのがこの作品についてで、尚且つ「劇場版GレコⅢ」が公開している今、少しでも多くの方に関心を持っていただきたいと考えた次第でこのようになりました。

 出来るだけGレコの劇場公開が終わるであろう8月中には執筆したいと思いますのでお待ちいただけると幸いです。

 それでは皆様、次の記事でよろしくお願いいたします。