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「機動戦士ガンダム 水星の魔女」への展望と期待

皆さん、お久しぶりです。本来ならこの夏に見た「劇場版 GのレコンギスタⅣ・Ⅴ」についての感想と劇場版Gレコを通じての評価をまとめて記事にする予定でしたが、8月中旬ごろから9月初旬にかけて身体の不調に見舞われていたことで書くタイミングを逃してしまい、BD発売時まで延期させていただくという判断をさせていただきました。結果として1年半以上の延期になってしまいそうで申し訳ありません。

では今回、半年振りに記事を投稿しようと思うまでに至ったかと言いますと、既にプロローグが見放題配信サイトでの配信が開始され10月2日から本編が放送開始されるガンダムシリーズ最新作である機動戦士ガンダム 水星の魔女」がこれまでになく私にとって期待出来る要素が驚くほど数多く入っていることが期待できて、居ても経ってもいられなくなったという衝動的なものです。以下いくつかのトピックに分けて考察も交えてになりますが、期待できる要素について展望と期待についてお話させていただこうと思います。

※以下「機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE」及び取り上げる他作品についてのネタバレが含まれるので未視聴の方はご注意ください

ガンダムシリーズとしての展望

初代ガンダムから数えて今年で43年を迎えるガンダムシリーズでは、ガンダム」というモビルスーツガンダムシリーズにおける人型機動兵器の総称)が他のモビルスーツとは違う特別な存在として描写されています。それは単にガンダムが他のモビルスーツよりも兵器として優れた性能を持つということに留まらず、造り手の祈りや願いや執念が込められていたり、人の手に余る恐るべき強大な力でありその力に屈しなかった主人公たちを始めとする乗り手が持つ希望を実現する力の象徴としての役割を果たすことも多くあります。

水星の魔女でもそれは例外ではなく、作中の「A.S(アド・ステラ)」という多くの企業が宇宙に進出し、巨大な経済圏を築いている世界観においては、義肢などの福祉工学に端を発する革新的な身体拡張技術「GUND(ガンド)」が存在しており、それをモビルスーツ用に発展させた「GUNDフォーマット」を採用しているモビルスーツ「GUND-ARM(ガンドアーム)」と総称され、それを更に縮めてGUNDAMガンダム)」と世界からは呼ばれるようになったという経緯があります。プロローグ作中ではさらにその詳細が語られており、GUNDフォーマットは本来人類が宇宙に進出することで生じる身体の機能障害を補う技術でしたが、その研究機関であるヴァナディース機関は地球の軍需企業であるオックス社に買収され、軍事転用されてガンダムという兵器が造られています。しかし身体拡張技術であるGUNDフォーマットで18mのモビルスーツであるガンダムを動かすことは人体に大きな負荷をかけることが作中世界では問題視されているという内情が語られています。実際にヴァナディース機関の代表でありGUNDフォーマット理論の第一人者であるカルド・ナボ博士ガンダム・ルブリスを指して「主人公達が宇宙で生きていくためにはこんな兵器ではなく、適応できる身体が必要」と呟き資金提供をしてくれるスポンサーが必要とはいえ軍事転用されることを不本意に思っており、しかしながら「ルブリスは私たちが目指すGUNDの未来。人類の可能性を開く新たな扉。」とも告げており、GUNDフォーマット、そしてそれを転用したガンダムには人を殺すための兵器で乗り手の体にも大きな危険を及ぼすという技術本来の目的と逆行するような矛盾を孕みながらも地球にいる人類(作中ではアーシアンと呼称される)が宇宙に進出していくための希望が込められていることが伺えます。

このようにガンダムは宇宙に進出していくアーシアンの未来の可能性への希望となっていましたが、軍需企業で構成されるモビルスーツ評議会という勢力はおそらく宇宙で生きる人々(作中ではスペーシアと呼称される)が多数で、アーシアンへの差別からか地球の企業であるオックス社が製造するガンダムを快く思っておらず、評議会の一員で軍人上がりのデリング・レンブランは野心から全世界に向けてガンダムの開発を凍結及びオックス社への行政執行という名目で評議会の私兵であるドミニコス隊を用いてガンダムの開発元であるオックス社とヴァナディース機関の研究フロントであるをフォールクヴァングへの襲撃を企て、関係者及びガンダムを始めとするGUNDフォーマット関連の技術の抹殺を行い、幼い主人公:エリクトとその母親:エルノラとガンダム・ルブリス1機を残して人を殺す危険性を孕みながらもアーシアンが宇宙に生きるための希望であったガンダムを全否定して表の世界から葬り去ってしまったという部分でプロローグは幕を閉じます。

こうしてプロローグで描かれたように水星の魔女での「ガンダム」もまた単なる兵器ではなく、地球で生きる人々が宇宙で生きるための希望という「願い」を背負いながらもその危険性から世界から否定され、「呪い」という烙印を押されてしまった兵器という重要な存在であることが伺えます。

歴代のガンダムシリーズでは初代から続いており最も大きな広がりを見せている宇宙世紀という世界観において、宇宙に進出した人類が宇宙に適応できるように進化したと言われるニュータイプという人類が存在しており、宇宙に生きる人類であるスペースノイドはこれを「人の革新」と掲げてジオンを名乗り、地球人類であるアースノイドの巨大権力である地球連邦政府から自治権を勝ち取るためにモビルスーツを開発して戦争を起こします。その戦火の中で多くが「モビルスーツを上手く扱える人殺しの道具」とされてしまい悲劇的な結末を辿ってしまう中、それでも各作品の主人公のようにニュータイプに人類が分け隔てなく分かり合える未来を見出す人々も現れ、彼らの存在を通して人類の相互理解への希望とその困難さについて描かれるというのが各作品の共通テーマの1つとなっています。

宇宙世紀の作品群の人類の宇宙への適応がニュータイプという精神的な面での発達とするなら、水星の魔女は義肢技術というより目に見えやすい科学技術的な面からのアプローチを取っているのが、地球人類と宇宙人類の力関係が真逆になっていることも含めて私としては非常に興味深いと感じています。それらを踏まえて水星の魔女で予想されるテーマの1つとして「科学技術への向き合い方とそれを通した人類の在り方」というSF色の強いものが予想されます。

・百合ロボット・SF作品としての展望

水星の魔女に期待できる要素の1つとしては、女性同士の強い関係性、所謂「百合」があります。「百合」と聞いてどんな関係性を思い浮かべるかはファンの数だけ違う解釈があると言っても過言ではない程定義が曖昧ですが、私は正負を問わず女性同士の間に発生する強い感情及び関係性」と広めに定義を取っており、ここでもそのような意味で「百合」という言葉を使わせていただきます。百合とロボットという組み合わせを取った作品は少ないながらも存在しており、ここでは私が見た神無月の巫女「グランベルム」の2作が挙げられます。(どちらもdアニメストア等で配信されている1クール作品です。)

神無月の巫女は前世よりオロチという怪物から世界を救う巫女という運命を背負った主人公の姫子が同じく巫女の運命を背負ったヒロインの千歌音と姫子の幼馴染であり彼女に想いを寄せている大神ソウマの3人による愛憎入り混じる1クールという長さに詰め込まれた恋愛劇が作品の大きな特徴で、最終的には戦いの果てに姫子は自身に最初から想いを寄せている千歌音の思いを受け取ると同時に自身の千歌音への想いを自覚し、想いが通じ合いながらも運命の巫女の宿命により引き裂かれながらも来世でまた出会うことを約束しながらも別れ、ソウマは失恋しながらも2人の為に世界を救うという百合のファンとしてはたまらない展開を迎えるのが醍醐味です。しかしロボットの役割はあくまで戦うための力に留まり、主にロボットで戦うのは姫子でも千歌音でもなくソウマであり、ロボットの存在自体はほぼ本筋に関わらないという点がロボットアニメのファンとしてはロボットのギミック、戦闘シーンが悪くないだけに勿体ないという感想が少しだけ残りました。

グランベルムは平和に暮らしていた主人公の満月がある日突然世界唯一の魔術師になるために魔術師の子孫が魔法人形・アルマノクスに乗って戦うバトルロイヤルに巻き込まれ、ピンチをヒロインである新月に救われ、魔術師の自身も何故かバトルロイヤルに巻き込まれるという様々な人物が魔術師になって叶えたい願いが交錯する物語です。この作品は様々な女性同士の感情が描かれるのが醍醐味ですが、中でも終盤の満月が実は新月の孤独の感情からバトルロイヤルを主催する存在であるマギアコナトスと呼ばれる空間が生み出した魔力で動く人形であり、一時はそのことに酷く動揺しますが、自分は新月の心であり、自分が消えることになったとしても新月の願いである「魔力をこの世界から完全に消滅させる」という目的のために共に戦うという無償の愛とも呼べるものが素晴らしく、満月は新月を守るために最後の敵に敗北・消滅してしまいますが、思念は残り新月の最後の戦いの際に力を与え彼女の機体を進化させるというロボットアニメのファンとしても燃える展開が待っています。本作のロボットである魔法人形・アルマノクスは全て所謂SD体型で作られており、SDガンダムが好きな方の目を引くデザインとなっていて戦い方も光学迷彩+遠距離広範囲ビーム攻撃特化型の機体や、扇を持ち重力操作で戦う機体などギミックに富んでいてそれぞれに覚醒・進化形態も用意されているというロボットアニメのファンにもたまらない作品となっているのですが、知名度が低いことが欠点で、長さはこちらも1クールと見やすいのもあって神無月の巫女と合わせておすすめしておきます。

ようやく本題に入りますが、私が本作で期待しているのは主人公:スレッタ・マーキュリーとヒロイン:ミオリネ・レンブランの関係性です。この2人にはプロローグで大きな因縁があり、それはスレッタが4歳の頃GUNDフォーマット技術の抹殺のため故郷であるフォールクヴァングが壊滅して父親と家族同然の人々を失っているのですが、その陰謀の首謀者デリング・レンブランはファミリーネームが同じことからも分かるようにミオリネの父親で、2人が生活を送る「アスティカシア高等専門学園」の理事長であり学園を運営するモビルスーツ産業最大手「ベネリットグループ」の総裁でもあるという衝撃的なものです。また、作品キービジュアル(記事の最後に貼る公式サイトURL参照)で2人がスレッタの機体であるガンダムエアリアルをバックに中心で互いに手を伸ばし合う姿が描かれていることから、この2人が浅からぬ関係性を築いていく事は容易に予想できます。予告PV2の様子や公式サイトのキャラ紹介から考えると2人は親絡みの因縁を知らされていないように思えるので、それが明かされた際にスレッタがミオリネを憎悪するのか・それとも自分も幼いころガンダムで無自覚に人を殺めていた事実を知って動揺するのか・ミオリネはただでさえ反抗している父の所業に罪悪感を覚えスレッタに贖罪を誓うのか……等々想像が捗り怖くもありますが期待せずにはいられないというのが今の感想です。また、ガンダムエアリアルはこれまでのガンダムシリーズではある程度成長した主人公に合わせた後期主人公機に装備されていることが多かったファンネル・ビット系の装備を初期から装備しており、しかもただ分離させて使うだけでなく機体本体に接続して機動力を強化したりライフルに接続してビームの出力を上げたりといった多彩な使い方をされるというギミック面での面白さと、「モビルスーツというものが殺し合いの兵器であること、その中でガンダムに託されたもの」というロボットを巡る話が本筋に大きく関わることが予想されるという意味でも、まさしく百合とロボットアニメ両方のファンである私が待ち望んだ作品と言っても過言ではありません。

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女 キービジュアル

 

・楽曲面での期待

水星の魔女のOPを担当するのはYOASOBIというアーティストで、近年タイアップや紅白出場などでどんどんメディアに出ているので、名前ぐらいなら聞いたことがあるかもしれません。このユニットのコンセプトは「小説を音楽にする」ことで、小説投稿サイトの「monogatary.com」に投稿された小説を元にした楽曲を製作しており、小説「タナトスの誘惑」を原作にした第一弾楽曲である「夜に駆ける」のMVはYoutubeで2.6億回の再生数を誇っており(2022年9月18日現在)、私自身もなんとなくYoutubeのおすすめに出てきたこのMVを見て原作小説を読んでその物語性の強さと表現力の高さに驚かされ、熱心とは言えないまでも日常的に聴くアーティストの1つとなっています。


www.youtube.com

monogatary.com

そんな彼らが水星の魔女のOPを担当すると聞いて驚きはしたもののすぐに流石と納得し、更にOP楽曲の「祝福」は発売するCDに付属する特典小説「ゆりかごの星」を原作としており、その作者は水星の魔女のシリーズ構成・脚本を担当する大河内氏と聞いた時に、この楽曲及び原作小説は絶対に水星の魔女本編に関連するものになり、更にYOASOBI公式Twtterアカウントのこのツイート(下記参照)や、先日解禁されたアニメサイズ尺の楽曲からも彼らの物語を音楽に落とし込む強い表現力が最大限に活かされた凄い楽曲になるという予感がひしひしと感じられて、OP映像やフル尺解禁が更に楽しみになりました。

 

 

ちなみに、Twitter等の情報を基に調べた先日解禁されたアニメサイズ尺の歌詞をこちらに載せておきますので、是非プロローグやPVの内容を踏まえた上で「これは誰から誰に向けられた言葉なのか?」等々色々と想像しながら聴いてみてください。

 

YOASOBI 「祝福」

遥か遠くに浮かぶ星を 思い眠りにつく

君の選ぶ未来が 望む道が

どこへ続いていても 共に生きるから

 

ずっと昔の記憶 連れられてきたこの星で君は願い続けてた

遠くできらめく景色に 飛び込むことができたのなら

一人孤独な世界で 祈り願う

夢を描き 未来を見る

逃げ出すよりも進むことを 君が選んだのなら

 

誰かが描いたイメージじゃなくて

誰かが選んだステージじゃなくて

僕たちが作っていくストーリー

決して一人にはさせないから

この星に生まれたこと

この世界で生き続けること

その全てを愛せるように

目一杯の祝福を君に

・最後に

私はガンダムシリーズがきっかけでロボットアニメのファンになりオタクという存在になって、更に百合という女性同士の関係性を取り扱うジャンルのファンにもなったことがきっかけでオタクとして、そしてこの世界の一存在としての視野が広がったと感じているので、より様々なジャンルに触れるようになった今でもこの2つと特撮というジャンルの合わせて3つが私の軸とも言える大きな存在です。そして私はいつしか百合要素が期待でき、なおかつ本格的に世界観や設定が作り込まれたロボットアニメを密かに望むようになりましたが、両ジャンルのファン層があまり被っていないであろうこの2ジャンルを併せ持つ作品はやはり難しく、「出たら良いな」くらいの微かな夢になっていました。

そんな時に前々からガンダムシリーズの新作として気になっていた水星の魔女が7月に限定公開したプロローグとそれと合わせて解禁された情報を見て、微かな夢であった「百合×本格ロボットアニメ」という願望を、よりにもよって私がオタクになったきっかけであり、長い歴史を持つガンダムシリーズが叶えてくれそうという私にとっては夢なのか現実なのか分からなくなるほど願ったり叶ったりの状況が訪れて、水星の魔女という作品に大きな期待を抱くようになりました。そして体調も回復しプロローグも配信サイトで解禁されて地上波放送も決定したこのタイミングで「私が書かずして他の何者が書くのか」という衝動に駆られ、この記事を書かせていただきました。水星の魔女は既存のガンダムシリーズとは独立した全く新しい世界観で繰り広げられるオリジナル作品でプロローグの完成度が非常に高く、散りばめられている要素も歴代のガンダムシリーズにはない全く新しいものが多くあるので、ロボットアニメと百合の両方のファンはもちろん、どちらか片方のファンや両方のファンではなくガンダムシリーズ自体全く見たことがないという方でも全く問題なく楽しめる作品になっていると思われますので、以下に貼る情報からプロローグを見て10月2日午後5時から放送、各種サイトで配信予定の水星の魔女本編に備えましょう。長々と自分語りをしてしまい恐縮ですが、これからもよろしくお願いいたします。

・「PROLOGUE」配信情報

9月4日~

バンダイチャンネル  
ガンダムファンクラブ 
Hulu 
ABEMA 
U-NEXT 
dアニメストア

9月25日(日)午後5時からMBS/TBS系全国28局ネットで「PROLOGUE」、そして翌週の10月2日(日)午後5時から同系列局で水星の魔女本編の放送が開始。